奨学金・TA・RAについて
海外の大学院、特にPh.D.過程では、学生自身が授業料や生活費を賄うことはあまりありません。大学や外部からの奨学金や、Teaching Assistant (TA) やResearch Assistant (RA) という職に就くことで、ほとんどの学生に授業料や生活費が支給されるためです。通常RA等は担当の先生が研究費を使って支払うため、奨学金を持っておりRA費用を払わなくてもよい学生は、出願に際し大きなアドバンテージとなります。ここではこうした奨学金やTA, RA制度の詳細を紹介します。
1. 奨学金
日本の財団等から支給される奨学金と、留学先の国や大学が支給する奨学金 (fellowship) があります。ここでは主に日本から支給される奨学金について説明し、fellowshipについては次の項目で説明します。
奨学金の応募要項は様々なので、よく読んで応募しましょう。中にはPh.D.課程を目指す方や、女性のみが応募できるものもあります。また、要項には対象となる学問分野が設定されている事が多いですが、希望の研究がその要項に少しでも関わるようであれば、とにかく応募しましょう。
応募期間は対象年度の前年7月から2月までと幅広くなっています(例えば、2017年入学ならば2016年の7月から2017年2月)。特に7月から10月にかけて多くの奨学金の応募があります。日本の大学院入試と日程が近いので、日本の大学院も受験する方は早めの準備が必要です。
北大の場合、応募に際して国際本部を経由しなければいけない場合もあるので、学部の国際関係の掲示板を頻繁に見ておきましょう。
以下に、海外大学院を目指す日本人大学生向けの奨学金を列挙しました。財団名をクリックするとその奨学金のサイトに移動できます。
CWAJ (女性のみ)
欧州EU日本オフィス(エラスムスムンドゥス奨学金等)
2. TA, RA, Fellowship
大学院では、授業のTAになる事によって、授業料が免除されたり給料を稼ぐことができます。TAの仕事は主に採点や質問対応ですが、まれに先生の代わりに授業を受け持つ事もあります。RAは、研究を行うことで担当の先生に雇ってもらうというシステムです。また大学院によっては、合格と同時にfellowshipを得る事ができます。Fellowshipによっては、授業料や生活費をカバーできることもあります。これらの経済援助は貸与ではなく給与なので、返済の義務はありません。
実例 1 (長谷川)
私は日本政府や財団から奨学金をもらわずに留学をしている。学部4年生の時に海外大学院進学を目指し、日本の財団の奨学金に応募したが、全て落ちた。理由は明らかで、自分が何を研究したいのか、どうしてアメリカの大学院でなければいけないのか、自分が将来何をしたいのか等全くわからず、奨学金申請の際に書くエッセイが説得力のない曖昧なものだったからだ。その後、受験年にアメリカにいたため、日本の奨学金に申請することが難しく、奨学金なしで受験した。
University of California-Davis, Food Science departmentのPh.D.課程では、初めの2 quarters (私の大学は、多くの大学で一般的なsemester制ではなく、quarter制をとる)分のFellowshipがもらえる。これは授業料及び生活費、保険料等をカバーするものである。つまり何もお金の心配をせずに、勉強/研究できる。3つめのquarterからは、研究室でRAとして働く、またはTAをすることで、上記の一般的な費用をまかなうことになる。RAは研究室によるが、毎quarterもらえる保証はなく、大抵はTAとして働きながら研究することになる。同時に毎年、大学内外の奨学金やgrantに応募する。
実例 2 (種田)
農学分野を対象としている奨学金がほとんどなかったため、農業に少しでも関係がありそうな分野(環境系や生物系など)の学生が対象となる全ての奨学金に応募した。農学が専門でない選考委員の方々を想定し、申請書類の研究内容欄ではできる限り分かりやすく丁寧な説明を心掛けた。結果として、幸運にも船井情報科学財団から奨学金を得ることができた。船井情報科学財団は日本の財団の中で最も充実した支援を行っている財団の一つであり、対象分野もかなり広く設定されているため、Ph.D.課程に出願する方はぜひ応募してほしい。