企業ポスドクをする利点
企業ポスドクは、募集人数がアカデミアでのポスドクに比べて少なく待遇も良いため、競争率が高いようです。かといって、誰でも企業ポスドクに進めばいいとは限りません。
そこで、このページでは企業ポスドクをするメリットとデメリットをまとめます。
メリット
i) スキルアップできる
ii) 興味のある分野内でのネットワークを得ることが出来る
iii) アカデミアでのポスドクに比べて高給料、充実した手当(”Benefit”)
iv) 研究予算や施設が充実している
v) 応用研究ができる (industrial setting)
i & ii) スキルアップ & ネットワークゲット!
企業の掲載するJob descriptionのQualification欄を読んでいる時、やってみたい仕事なのに、自分が必要条件を満たしていない(スキルや就業経験が足りない)事がよくあります。
そういった場合、企業ポスドクから始める事で、興味のある分野内でのネットワークを広げながら、教育の一環として新たなスキルを身に付ける事ができます。
ポスドクの任期が終わった頃には、新たなスキルとネットワークを持って、さらにキャリアアップしたポジションに挑戦する事が出来るでしょう。
また、興味のある企業でポスドクをする事で、ポスドクの任期が終わった時にその企業で正規雇用される事があります。しかしこれは企業によって方針が大きく異なる点で、例えば、ポスドクをした学生は、化学会社Cibaではほぼ全員正規雇用されるようですが、一方でGenentechでは10%ほどが正規雇用に至るようです(Genentechでは、自社に限らず、さらにキャリアアップしたポジションに進むことを勧めているため。以下のウェブリンク参考)。
iii) 給与&手当が手厚い!
Johns Hopkins UniversityのProfessional Development and Career Officeによると、アカデミアでポスドクをする場合と比べると、企業ポスドクをして得られる給与は、一般的に20%以上高いそうです。
iv) 研究予算や施設が充実!
アカデミアでポスドクをする場合、大学や研究室によって研究予算や施設の充実度にかなり差が出ますが、企業でポスドクをする場合は大抵こういった点について恵まれているようです。
デメリット
i) 雇用期間が短めである
ii) 基礎研究ができない
iii) 論文発表の機会が少ない
iv) 自由度が低い
ー補足ー
i) 短めの雇用期間
アカデミアでのポスドクは5年間程度の雇用が一般的ですが、企業ポスドクは2から4年間の雇用のようです。
雇用期間が短ければ、またすぐに求職を始めなくてはならなくなるので、腰を落ち着かせて研究・働きたい人にとってはデメリットと言えます。
ii) 基礎研究ができない
これはメリットの5点目に挙げられている”応用研究ができる”の裏返しです。
企業ポスドクで与えられる研究内容の多くは、その企業が”ビジネス”として研究するべきプロジェクトとなるため、アカデミアで多く行われる基礎研究を中心とした研究は一般的ではありません。
iii) 論文発表の機会が少ない
今後アカデミアでのキャリアパスを考えるなら、論文数が少ないのは痛手になるかもしれません。一方でアカデミアでポスドクをすれば、企業ポスドクをする場合と比べてより多くの論文発表の機会があるのが一般的です。
しかし、今後も企業で働き続けようと思っている人の場合は、あまりデメリットではないでしょう。
では、企業ポスドクをしている間に論文発表の機会がどれくらいあるのか(企業が論文発表に乗り気なのかどうか)をどのように調べると良いのでしょうか?
American Association for the Advancement of Science(AAAS)によると、PubMedといった論文検索サイトで応募しようと考えている企業の名前を検索する他、企業のウェブサイトに載っている発表論文を探してみることも勧めています。
多くの企業は、研究を論文として発表する程度を制限していますが、一方で学会へ参加する機会はとても多いようです。
iv) 自由度が低い
ポスドクではあっても、企業の一員として働くことになります。そのためアカデミアでポスドクをすると比較的自由に自分のペースで研究を進める事ができる事が多いですが、企業でポスドクをする場合はチームの意向に従う事になり、自由度が低い可能性があります。
最後に…
企業ポスドクはかなりの狭き門である事から、せっかく入れたのに企業方針や企業で働くのが合わないという事になるのは避けたいものです。
そこで興味のある企業でインターンシップをするのも一つの選択肢です。というのも、インターンシップは6週から1年の間企業で働く事ができるため、その間に自分に合うのか見極めるのも手です。
参考